過払い物語 その2 (4/3UP)
「過払い物語 その1」で取り上げたMさんのその後ですが、平成18年3月下旬に最後まで
手こずらされたG社との和解が成立し、無事卒業を迎えました。
平成17年9月初めにMさんが私の事務所を訪れたときには、大手サラ金3社から合わせて
218万の債務がありました。また、債務整理の依頼に来る直前に1社を完済していました。
ところが、完済を含めた4社全てが過払いで、Mさんは218万の債務がゼロになるとともに、
最終的に4社合計で555万円の過払金を取り返すことができたのです。
「過払い物語 その1」では、最初に処理が完了し、金額も一番多かったA社について書きまし
たが、今回は残りの3社についてお話ししましょう。
U社
債務整理の依頼に来る直前に完済していた業者です。
履歴の開示請求を出すと、はじめは「債権ありません」と答えましたが、3回ほど開示請求を繰返
したら、過去10年分の記録と共に、55万円余りの過払金があると届け出てきました。
U社はメガバンクの系列なので、A社同様、比較的お行儀がいいのでしょうか?
しかし、MさんがU社から借入れていたのは20年前から。10年分の履歴開示では納得できま
せん。でも、U社は「10年以上前の記録は保存していない」と開示に応じません。
そこで、U社が開示した10年前の債務の残高をゼロ円として計算し、91万円を返還してもらう
ことで合意しました。U社については裁判をやらずに済みました。
I社
ここは独立系最大手、チワワのコマーシャルでおなじみの会社です。
MさんはI社に60万余りの債務がありましたが、再計算をすると過払い元金だけで約76万円。
交渉してみると、元金の8割なら任意に支払うとの返事。
それでは話にならない。さっそく裁判を起こしました。
でも、I社は裁判に出てきません。
過払い元金76万円だと、簡易裁判所で裁判をやることになります。ところが、簡易裁判所では、
答弁書や準備書面を出せば、裁判所に来なくても構わない、というルールがあるのです。
(これを陳述擬制と言います。)
こちらはせっせと裁判所に通うのに、I社は陳述擬制を悪用し、屁理屈を並べた準備書面を出して
欠席する。そして少しでも支払を少なくしようと、裁判の合間合間に「8割でいかがですか、どー
する?」「9割で納得できませんか、どーする?」と虫のいい条件で和解を持ちかけてくる。これ
にはフラストレーションが溜まってきます。いつまで根比べをやるのかな、と思いきや、3回目の
裁判期日を前にして、I社は降参しました。
「先生、払いますよ。いくらならいいですか?」
それまで馬鹿丁寧な口調だったI社の担当者が、くだけた口調で切り出しました。
私は裁判の欠席を繰返されて頭に来ていたので、「過払い元金全額に、利息と裁判費用の実費を出
してもらいましょう」と満額回答を求め、87万円で和解しました。
後から司法書士仲間から聞いた話では、I社はいつも2回は弁論期日を引き延ばすのだそうです。
多分、社内規程でそうなっているのでしょう。私の相手をしたI社の担当者も、最後は「せんせ〜、
もう準備書面書くのやだよー。書くことなくなっちゃったしさぁ」とネを上げていました。
いくら仕事とはいえ、勝ち目のない裁判で与太話を並べ続けるのは、彼にも辛かったのでしょう。
G社
これは外資系で、不思議な行動を取る会社です。
任意整理で、過払いにならない時には、G社は大幅減額に応じるのですが、過払金は絶対に返そ
うとしません。表向きは、ほのぼのと「お客様を大切にします」と言いながら、過払いの返還を
申し入れると、平気で「返してほしければ訴訟を起こせ」と啖呵を切ります。
そして取引履歴の開示も10年しか出さず、10年以上前の記録は高等裁判所の文書提出命令に
も絶対に応じません。そのため全国で弁護士の標的にされて、過払い訴訟で多くの敗訴判決を積み
重ねてきました。きっとアメリカの訴訟社会の流儀をそのまま日本に持ち込んでしまい、失敗した
のでしょう。
MさんとG社との取引は約11年前から。しかしG社は10年分しか開示しません。
そこで、G社が開示した取引記録の、開示初日の借入残高をゼロ円として再計算をし、172万
という結果を得ました。未開時期間が1年では、借入れ残高はゼロにはなりませんから、172万
は実際の過払金額よりかなり多くなるはずなので、G社が任意交渉に応じるなら、私も適当と思わ
れる金額まで減額するつもりでいたのですが、G社は全く交渉に応じず、案の定「訴訟を起こせ」
と答えました。きっと、G社の社内規程で、裁判を起こされないかぎり、過払金は返さないことに
なっているのでしょう。以下、裁判の経過を簡単に記します。
H17.11.2 東京地裁に起訴
H17.12.2 第1回口頭弁論 被告のG社は答弁書を出して欠席
H18.1.20 第2回口頭弁論 しかし前日にG社が延期を申し出て、期日は流れてしまう
H18.2.21 第1回弁論準備期日 G社は弁護士を立て、推定計算を出してくる
裁判所はG社の推定を加味し、これに6%の利息を付けた和解を勧める
H18.3.8 第2回弁論準備期日 裁判所が170万円での和解を説得
G社の弁護士は諾否をG社に持ち帰って検討
H18.3.22 第3回弁論準備期日 170万円で和解成立
G社は最初過払金に利息を付けることを拒みましたが、裁判所は、G社の推定に6%の利息を加
味して、170万という金額を示し、和解を勧めました。
私とMさんは相談の上、G社にプレッシャーをかけてみるために、「G社の推定に根拠はない。
争うのなら、全ての記録を開示して正確な金額を示すべきだ。」と強硬な態度を取りましたが
(和解を拒絶する準備書面を出したら、書記官が慌てて「和解の意思は全然ないのですか?」と
電話をよこしました)、G社の未開示期間は1年ほどですから、裁判所が示した170万という額
は、客観的にはほぼ正確といっていいでしょう。
G社から何回も引き延ばされて起訴から5か月が過ぎ、例年より早く東京の桜が開花した日に
和解が成立し、裁判が終わりました。日比谷公園では枝垂れ桜が咲き、染井吉野も一輪二輪と開き
始めていました。
私がサポートをしたとはいえ、Mさんは根気よく裁判所に通い、裁判官やG社の弁護士を相手
に、生まれて初めての裁判を一人で戦い抜きました。そして利息まで含めた全額を取り返したので
す。とても立派です。これからは、Mさんがサラ金への返済に悩むことのない、平穏な生活を送
られることを願います。
ちなみに、東京地裁の玄関で別れたときのMさんの言葉は、「花粉症がつらい」でした。
文責 菊池雅都 (http://jikohasan.org/)