自己破産

自己破産とは? 東京での注意事項
1 自己破産とは

自己破産の基本的な考え方は、

①債務超過となった人が、自分の財産を全部差し出します
②これを破産管財人がお金に換え、債権者全員に平等に分配します
③それでも残った債務については、免責決定を得て免除してもらいます
こうすることで、多額の負債で行き詰まった人の経済的再建を図ります。

 このうち、「自分の財産を全部差し出す」という要件は、実務上20万円以上の高額財産に限られ、最近流行のプラズマテレビ、自動車やオートバイ、不動産などの高額な財産は手放さなければなりませんが、日常生活に必要な衣服や家具、最低限の生活費として手元に残さなければならない金銭は除かれます。
 どうしても愛車やマイホームを失いたくないという人には、民事再生が向いているでしょう。

 また、破産者に目ぼしい財産がなく、破産者の財産によって破産費用も賄うことができなければ(破産するにも結構お金がかかります)、「同時廃止」となって、管財人による財産の換価と配当を省略し、事実上何もしないまま破産手続きを終わらせてしまいます。
 そして、免責決定を得て、残った債務を免除してもらうことで、債務から解放され経済的な再出発を図ります。

2 破産手続のおおまかな流れは、次の通りです。
①破産手続開始の申立(債務者が申立てれば、免責申立を擬制)
 同時廃止の申立
②裁判官による破産審尋と破産手続開始・同時廃止の決定
③裁判官による免責審尋、免責許可の手続
④免責許可の決定・確定

3 都内にお住まいの方へ 東京での破産申立の注意事項
①管轄(どこの裁判所に申立てるか)
 破産をするには、裁判所へ「破産の申し立て」をしなければなりません。
 でも、裁判所は日本中にたくさんありますから、自分がどこの裁判所へ破産申立てをすればいいのか、戸惑うかもしれませんね。
破産は債務者の住所地の地方裁判所に申立てます。(これを普通裁判籍といいます)
東京では、23区と島嶼部の方は霞ヶ関の東京地裁民事20部、それ以外の立川・武蔵野・青梅・八王子などの多摩地方と町田にお住まいの方は、東京地裁八王子支部へ破産を申立てることになります。

破産のデメリットと資格制限

1 破産によるデメリット
一部の職業の人(破産によって喪失する資格を参照)を除き、破産によるデメリットはほとんどありません。ここでは、よく聞かれる不安の声にQ&Aでお答えします。

①破産したら選挙権がなくなるのではないか?
   → 選挙権などの公民権が失われることはありません

②破産したら戸籍に書かれるのではないか?
   → 戸籍や住民票に記載されることはありません

③破産したら、役所や会社に知られてしまうのではないか?
   → 市区町村長が発行する身分証明書には破産者であることが記載されます
     が、この証明書を使用する機会はほとんどありません
     破産すると官報(国が発行する新聞のようなもの)に公告されますが、
     普通の生活で官報を見ることはほとんどありません。
     裁判所が職場に通知するようなこともありません。

④破産したら、仕事を辞めなければならないのではないか?
   → 法律上は、破産を理由として、仕事を辞めさせられることはありません
     が、実際問題として、周囲の目が気になったりして職場に居づらくなって
     しまうことは多いでしょう。周囲の偏見や無理解を跳ね返す勇気が必要で
     す。ただ、本人さえ黙っていれば、破産したことを職場に知られる可能性
     は低いはずです。

⑤破産したら、アパートを出なければいけないのか?
   → 家賃をきちっと払っていれば、追い出されることはありません。
    (民法改正で、破産は賃貸借の解除事由から外されました)

⑥破産したら、子供が学校に行けなくなるのではないか?
   → 親が破産しても、法律や社会、制度の上では、子供には一切影響は
     ありません。むしろ親が多額の負債に喘いだり、必要以上に破産に
     怯えたりしている方が子供に悪影響を与えるのではないでしょうか。

⑦破産したら、保証人に迷惑がかかるのではないか?
   → 保証人には大きな影響が出てしまいます。債務者が破産したら、
     保証人は期限の利益を失って、直ちに債務全額について債権者から
     請求を受けることになります。また、破産者が免責を取っても、
     保証人は責任を逃れることはできません。場合によっては保証人も
     一緒に破産する必要が出てしまうでしょう。もし保証人がいるのなら、
     自己破産を検討するときには、事前に保証人にもよく事情を説明した
     ほうがいいでしょう。

2 破産すると就くことができなくなる職業
①公法上の資格制限
 弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、公証人、司法書士、行政書士、人事院の人 事官、国家公安委員会委員、都道府県公安委員会委員、検察審査員、公正取引委員 会委員、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引主任者、商品取引所会員、 証券会社外務員、有価証券投資顧問業者、質屋、古物商、生命保険募集員、損害保 険代理店、警備業者および警備員、建設業者および建設工事紛争審査委員会委員、 風俗営業者および風俗営業所の管理者など
<適用外>
 医師、薬剤師、看護士、建築士、宗教法人の役員、特殊な職を除く一般の国家公  務員や地方公務員、学校教員など

②私法上の資格制限
 代理人、後見人、後見監督人、保佐人、遺言執行者
 合名会社・合資会社の社員
 株式会社・有限会社の取締役や監査役

破産の費用と必要になる書類

破産の費用と必要になる書類
これは裁判所によって扱いが異なります。破産を申立てようと予定している裁判所(あなたの住所地を管轄する裁判所)に問合せてください。

手続のための費用
①申立手続費用  1500円(印紙、免責手数料を含む)
(東京地裁の場合)
同時廃止事件(管財人が選任されない場合)
予納郵券 4000円
予納金(官報公告費用)  1万~1万5000円
②少額管財事件ではさらに予納金20万円が必要です。

破産手続開始の申立書類
①破産手続開始申立書
②戸籍謄本(省略のないもの)
③住民票(世帯全員について、本籍・続柄の省略のないもの)
④資産目録
⑤資産目録附属書類のコピー、補充書
⑥債権者一覧表
⑦陳述書
⑧陳述書附属書類のコピー、補充書
⑨家計全体の状況(2か月分)
⑩家計全体の状況の附属書類のコピー、補充書

主な添付書類
①給与明細(直近3ヶ月分)及び賞与明細(直近1年分)
②源泉徴収票(確定申告書)及び課税証明書  過去2年分
③離職票または退職金支払額証明書
④年金・公的扶助関係書類
⑤家族・同居人の収入証明資料
⑥預金通帳 全冊の過去2年分の写し
⑦保険証券・解約返戻金額証明書
⑧車検証・自動車査定書
⑨不動産登記簿謄本・固定資産税評価証明書・査定書
⑩住宅ローン契約書・償還予定表
⑪建物賃貸借契約書
⑫退職金規定または退職金見込額証明書
⑬その他 上記以外の資産がある場合、その価格が分かる資料

免責不許可事由と非免責債権

免責不許可事由

破産をする以上は、裁判所から免責決定をもらって債務をゼロにしなければ、破産する意味がないわけですが、免責とは債権者を犠牲にして破産者の経済的再生を図る制度ですから、破産者が破産するに至った理由が道義的に宥恕できないものであれば、責任を免じることもできなくなります。
 破産法は252条で免責が許されない事由を掲げています。この中で特に多いのが破産法252条4号の「浪費又は賭博(ギャンブル)」です。しかし、裁量免責という制度があって、たとえ浪費やギャンブルであっても裁判官の判断で免責を許すという運用が広く行われています。

浪費・ギャンブルによる免責不許可の目安
 免責の可否は個々の裁判官の判断ニに委ねられていますが、いろいろなケースを総合して推測すると、「おおよそ一ヶ月の生計費の3分の1」が免責の目安とされているようです。
 つまり、一ヶ月の生計費の3分の1を超える金額を恒常的に浪費・ギャンブルに使用し、支払不能に至った場合には、免責が困難になると覚悟したほうがいいでしょう。
逆に言えば、一度か二度はギャンブルや浪費で一ヶ月の生計費の3分の1を超える支出があっても、その後の返済や生活費の不足のために借入が増えてしまったようなケースなら、免責されるものと考えられます。

任意弁済による裁量免責
 浪費・ギャンブルが原因で破産法上は免責が認められない場合でも、裁判所が債務者の任意による一部弁済を勧告し、それが履行されたら裁量的に免責を認める運用も行われています。
 裁判所から求められる一部弁済額は、これもおおよその目安ですが、
 浪費の場合      負債総額の1~2割
 ギャンブルの場合   負債総額の2~3割
 詐欺の場合      負債総額の3割以上
 と言われています。ということは、裁判所は、反省や償いとして、民事再生をするのと同じ程度の経済的な負担を求めているのかもしれません。

(参考:破産法252条)
①債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと
②破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと
③特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと
④浪費又は賭博その他射こう行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと
⑤破産手続開始の申立があった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと
⑥業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽装し、又は変造したこと
⑦虚偽の債権者名簿を提出したこと
⑧破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと
⑨不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと
⑩免責許可の決定が確定た日から七年以内に免責許可の申立があったこと(民事再生も同様)
⑪破産者の説明義務(40条1項1号)、破産者の重要財産開示義務(41条)、又は免責調査についての協力義務(250条2項)、その他この法律に定める義務に違反したこと
 但し、こうした免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することができる。

免責によっても免除されない債権
「免責決定が貰えれば債務がゼロになる」と喜びたいところですが、免責の対象から除外されている債務、すなわち免責決定が出ても、免責の例外として全額を支払わなければならない債務があります(債権者保護の見地から、民事再生でも同様の債権を再生計画で減免できなこととされています)。
(参考:破産法253条)
①税等の請求権
②破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
③破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
④次に掲げる義務に係る請求権
 イ 夫婦間の協力及び扶助の義務
 ロ 婚姻から生じる費用の分担の義務
 ハ 子の看護に関する義務
 ニ 親族間の扶養に関する義務
 ホ イ から ニ に類する義務で契約に基づくもの
⑤雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
⑥破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(破産手続開始の決定があったことを知っていた者の請求権は除く)
⑦罰金等の請求権

差し押え禁止財産

差押禁止財産

差押禁止動産(民事執行法131条)
①債務者等の生活に欠くことのできない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具(カラーテレビ、エアコン、テーブル、冷蔵庫、箪笥等も含まれるとする判例あり)
②債務者等の生活に必要な一ヶ月間の食料及び燃料
③標準的な世帯の一ヶ月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭(現在は66万円)など

差押禁止債権(民事執行法152条)
①給料、賃金、俸給、退職年金および賞与の4分の3は差押が禁じられる
但し、4分の3が政令で定める金額(現在33万円)以上の場合、政令で定める金額まで
②退職手当の4分の3は差押が禁じられる
但し、① ② ともに裁判所の裁量権がある
その他
 恩給を受ける権利
 年金給付を受ける権利
 失業給付を受ける権利  など

新破産法による自由財産(34条3項)
 破産者の経済的再生に資するよう、標準的な世帯の必要生計費の3か月分(99万円)の自由財産を認める。裁判所の裁量により自由財産の範囲の拡張も可能

 破産手続開始決定後に破産者が取得した財産は、破産財団を構成せず、破産者が自由に処分できる。

コラム 破産は再スタート

Aさんを伴って免責審尋に行った。
横浜地裁の債権者集会室で一度に20人ほどを集めての集団審尋で、裁判官が「債権者から異議が出なかったので免責を許可する」と話しただけで実質2分ほどで終了した。これでAさんは借金から解放された。
 Aさんは平成7年頃から競馬で約600万円を、平成9年頃からスナック等での飲食に約1000万円を使っていた。
私が着手した時には、サラ金・カード会社・銀行6社から約500万の借入れ、さらに年金・健康保険を約100万円滞納していた。サラ金の借入れは利息制限法に引き直して約300万まで減少したが、それでも年金・健康保険の滞納と合わせると約400万円の債務が残った。
 Aさんの場合、浪費やギャンブルが大きいので免責(借金をチャラにする)は困難に思われたが、最近母親が末期癌と診断され今後はAさんが母親の医療費や生活費を負担しなければならない事情があり、裁判所の裁量に一縷の望みを託して破産に踏み切った。裁判所は寛大な判断をしてくれた。
 免責審尋に暗い印象はなかった。物憂げな雰囲気は否めないが、集まった人たちはみな普段着姿で、子供連れや、中には乳母車を押しながら審尋室に入っていく若い女性も見られ、誰の顔にも重荷から解放された明るさと安堵感が滲んでいた。
個人破産は救済と再スタートのための制度なのだ。多重債務で苦しんでいる方々には、恥や意地を捨てて積極的に利用して貰いたい。